【書評】『敗者のゲーム』から学びたい投資家の心得6つ
投資本としては定番と言われる『敗者のゲーム』をKindleで再読しましたので、定期的に振り返りたい本書が示す投資家の心得6つについて自戒も含めサマライズします。
投資を続けていると、他の人の投資方針の方が優れているように感じたり、他の投資手法が気になってしまうことも多いかと思います。そんな時は、本書を読み返すことにより自身の投資方針の原点に立ち返り、自分の投資を見つめ直すことが出来ると思います。
ウォーレン・バフェット氏も「投資は単純だが、単純なことは継続するのが難しい」という趣旨の発言をしているようですが、やはりブレずに投資を継続していくことはとても難しいことだと実感しているため、本書は定期的に読み返す時間を作りたいと思った次第です。
以下、私が本書の中で重要だと認識した6つの心得となります。
- 長期の投資方針を決める
- 投資対象は株式を選択する
- 欲を出さず、市場平均を取りに行く
- ランニングコストの低いインデックスファンドを選択する
- 投資対象の入れ替えはしない
- その方針を堅持する
それでは、順を追って解説していきます。
長期の投資方針を決める
投資で資産形成をすることを考える場合、時間については10年以上の長期間を設定する方が元本割れの可能性は下がります。短期間でキャピタルゲインを得るデイトレードや、数週間での利確により利益を狙うスイングトレードで長期に渡って利益を上げることの難しさは言うまでもありません。
自分はなぜ投資する必要があり、何年後にいくら位の金額になっていれば良いかということは必ず決めておきましょう。
このような目的や方針を設定せずに何となく投資をする場合、今後待ち受けている相場の変動や大きな暴落には耐えることが難しく、最悪の場合は暴落した底値で投げ売りしてしまうことも考えられます。
投資対象は株式を選択する
20年以上の長期間に渡って投資をする場合、投資対象さえ間違わなければ資産形成できる可能性は格段に高まります。
本書内のアメリカ資本市場の投資リターンの実績をみてみると、1926年から2012年まで期間に1ドル分の株式、債券、短期財務省証券を持っていた場合、最終的に債券が99ドル、短期財務省証券が28ドルになっていたのに対し、株式はなんと3,118ドルになっていたというデータがあります。
上記のことを参考に、投資の期間についてもなるべく長期の期間を設定し、長期間株式市場に居続けることが重要だと実感しています。
本書では、10年以上の期間で運用する場合は債券などを組み込まず、すべて株式で運用することを勧めているのも興味深い点です。債券をポートフォリオに組み込むかどうかはもちろん好みによりますが、悩まれている方はひとつの参考になると思います。
欲を出さず、市場平均を取りに行く
現在の株式市場は、プロと言われる機関投資家達が大部分を占め、株式市場という名のリングで本気の殴り合いをする場所となっています。ニューヨーク証券取引所で1日に取引される売買高の95%は機関投資家によるものとのこと。
このような環境で、アマチュアとも言える個人投資家が勝ち続けるには非常に厳しい環境であり、その様なハイレベルな戦いの中で相手のミスを瞬時に拾い、仕掛けて勝つのは至難の技です。
株式市場はテニスのアマチュアの試合と同じく「敗者のゲーム」であり、勝ちに行くためにミラクルショットを決める必要はなく、いかにミスをしないかということが勝敗を分けると解説されています。
実際に、過去20年間で8割の専門運用期間が市場平均に負けてきたという事実もあるため、ファンドマネージャーが運用するアクティブファンドではなく、指数に連動するパッシブ運用のインデックスファンドへの投資により、平均点を取りに行くことの妥当性も非常に理解できます。
平均点といっても、その平均自体に優秀なファンドマネージャー達が含まれており、その総体を含めた平均となるため実際にはこの市場平均には8割のアクティブファンドが勝てていないという事実は納得のいくものです。
短期的にはアクティブファンドの運用成績が市場平均を上回るかもしれませんが、長期的に上回り続けることが難しいことは歴史が証明しています。欲を出さず、市場平均を取りにいきましょう。
ランニングコストの低いインデックスファンドを選択する
投資対象商品の選定にあたっては、アクティブファンドではなくインデックスファンドを選び市場平均を狙うとして、今度はどのようなインデックスファンドを選んだら良いかという課題があります。
結論的には、なるべく国際的にも最大限分散されたランニングコストの低いインデックスファンドを選ぶのがベストということになります。最近は投資信託の信託報酬も下がってきており、ノーロードのインデックスファンドも増えてきています。
米国市場に広く投資したい場合は私がメインで投資している楽天VTIや、eMAXIS SlimS&P500、SBIバンガードVOO等への投資が最適解の一つだと思いますし、広く国際分散すつことが好みであれば楽天VT、eMAXIS Slim全世界あたりを選んでおけば、現時点(2019/12/31)ではランニングコストも最低水準でありベストな選択になり得ると思います。
ETFであればVT、VTI、VOO、IVV、SPYといった低コストの米国ETFに投資するというのも理に適っていると思います。どちらもコストが引き下げ傾向にありますので、この辺りの金融商品であればハズレはなく、後は個人の好みでしょう。
投資対象の入れ替えはしない
これは過去に私自身も何度もやってしまっているのですが、投資対象銘柄の入れ替えは頻繁に行わない方が良いです。
ノーロードの投資信託であれば売買にあたって手数料はかかりませんが、利益が出ている場合はその時点で値上がりしていればその分に対し課税されてしまいます。米国株ETFも、近々買付け手数料が無料になる証券会社もあるようですが、売却については手数料がかかる証券会社が多いので注意が必要です。
要は、最初に決めた投資方針に従い、むやみにポートフォリオの入れ替えを頻繁に繰り返してもトータルリターンの上昇には寄与せず、むしろ売買頻度があがる度に手数料が発生しトータルリターンは下がってしまうということです。
隣の芝は青く見えるため、どうしても他の人が投資している商品に変えたくなったり、後発の手数料が更に安い投資信託などがリリースされると気になってしまいますよね。
0.1%信託報酬などのランニングコストが違うことにより、1,000万円あたり年間1万円の違いを生みますので、これを大きいと捉えるかは考え方次第ですが、手間もそれなりにかかるので投資金額が5,000万円以上とか大口でなければそんなに気にする必要はないかと個人的には考えています。
とはいえ、既存の投資対象の金融商品と新しくリリースされた金融商品のランニングコスト差が大きいケースもあるかと思います。そんな時は、新たに積み立てる資金を新しい金融商品に振り向け、既存商品はそのまま持ち続けるというのも選択肢としては有りだと思います。あくまでも入れ替えに伴う売買コストとの兼ね合いで判断していくのが賢明でしょう。
その方針を堅持する
上記5つの心得をしっかりと守り投資を継続していきたいところですが、やはり長期間続けていくこと自体が最も難しいことだと思います。
長期投資の方針を決め、投資対象となる金融商品を決めた後は、そのままポートフォリオに入れ替えなどはせずに、とにかく投資を続けていくことが長期的なリターンを最大化させることに繋がりやすいと思います。投資の軸がブレそうになった際には、本書を読み返し、自身の投資について振り返りをしていきたいと思います。
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